FF4方式とは何だったのか
2006年から2007年にかけて、スクウェア・エニックスはニンテンドーDS向けにFF3とFF4の3Dリメイクを発売した。開発を担当したのはMatrix Softwareという外部スタジオ。グラフィックは4頭身のSDキャラクターで、フォトリアルとは程遠い。しかしドット絵の持っていた「記号性」を継承しつつ、表情・演技・ボイスを追加することで現代的な体験として成立していた。
FF4のDS版は2007年12月に日本で発売され、その後スマートフォンへも移植された。黒歴史であればスルーされるはずの作品が、今も「3D REMAKE」という名前でストアに残り続けていることは、それなりの評価を受けた証拠だろう。
ではなぜ、この方式がFF5とFF6に続かなかったのか。
状況証拠を並べる
公式がこの問いに直接答えたことはない。あくまで状況証拠からの推論になる。
まず時系列を確認する。FF3 DSが2006年、FF4 DSが2007年。この時期、任天堂のハード戦略はDSからその後継機である3DSへの移行準備に入りつつあった。3DSが発売されたのは2011年だが、開発者向けの情報はそれより数年前から動いている。DS向けに新たなリメイクプロジェクトを立ち上げるには、タイミングとして遅くなりすぎていた可能性がある。
次にFF6固有の問題がある。スクエニの北瀬佳範プロデューサーは、FF6のリメイクについて「FF7リメイク以上の開発コストがかかる」という趣旨の発言をしている。その理由として挙げられるのが世界崩壊だ。FF6はゲーム中盤で世界の地形そのものが変わる。マップが丸ごと入れ替わるこの構造は、どの頭身・どのスタイルで作っても作業量が跳ね上がる。4頭身でも同じことだ。
FF5については別の事情も考えられる。ジョブシステムによる膨大な組み合わせ、複数の世界、隠し要素の多さ。これらを3Dで再現しようとすれば、見た目の頭身に関係なく、データ量とデバッグの規模が膨らむ。
そしてスクエニ自身の問題
ただ、技術的・コスト的な理由だけで説明しようとすると、どこか腑に落ちない部分が残る。
FF4 DSが一定の成功を収めたにもかかわらず、その方式を横展開しなかったのはなぜか。ゼノギアスのチームを手放したときと同じ匂いがする。数字の基準が狂っていた、という問題だ。
FF4 DSが数十万本売れることは、おそらく当時のスクエニの経営判断としては「小さい成果」に分類されていた。FF7リメイク級の期待値が社内の基準になっていたとすれば、DSの小さい画面で4頭身キャラが動くリメイクに大きなリソースを割く理由を、経営として説明しにくかったのかもしれない。
さらに2008年前後のスクエニは、FF13の開発に大規模なリソースを投入していた時期と重なる。社内の優先順位がハイエンド路線に集中していたとすれば、DS向けの中規模リメイクは後回しにされ続けた可能性がある。
私の見解
証明はできない。ただ状況証拠を並べると、ひとつの像が浮かんでくる。
FF4方式のリメイクが続かなかった理由は、技術的に不可能だったからではなく、そのやり方が「スクエニらしい仕事」として社内で評価されにくかったからではないか。
4頭身・DS・中規模。これはFF7大ヒット以降のスクエニが目指していた方向と逆を向いていた。やれたはずのことが、組織の価値観と噛み合わないまま、時機を逃した。
ゼノギアスのチームが手放されたのと、FF5・6がDS方式でリメイクされなかったのは、直接関係のある出来事ではない。でも根っこにある構造は同じだと思っている。FF7の成功が作った「大きくなければならない」という呪縛が、中規模の正解を何度も見えにくくした。
やっとけばよかった、と思うタイミングは、きっと当時もあったはずだ。ただ当時のスクエニには、それを「正解」と判断できる物差しがなかった。


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