鬼滅の刃はなぜ年配女性に刺さるのか——少年漫画に見えて、実は別の文法で動いている

鬼滅が年配女性に人気がある理由 コンテンツ文化

鬼滅の刃は少年漫画だ。週刊少年ジャンプで連載され、主人公は男の子で、バトルがメインだ。しかし熱狂的なファンには年配の女性が多い。なぜか。


少年漫画の皮を被った別の何か

鬼滅の刃には、少年漫画らしくない要素が多い。

圧倒的な暴力と死。報われない献身。家族への執着と喪失。自分を犠牲にする愛。これらは少年漫画の「友情・努力・勝利」とは異なる文法だ。

むしろ昼ドラやレディースコミックに近い。愛憎と業の深さ、理不尽な運命、それでも誰かを守ろうとする意志——これが年配女性の琴線に触れる。


煉獄さんが象徴するもの

煉獄杏寿郎の死に、多くの女性ファンが号泣した。強くて高潔で、自分を犠牲にして他者を守り、運命に抗えず倒れる。これはギリシャ悲劇から続く「悲劇的ヒーロー」の類型だ。完全に勝つヒーローより、高潔なまま敗れる人物の方が感情的な引力が強い。

興味深いのはその後だ。多くの女性ファンが「煉獄さんは負けていない」「報われた死だった」と解釈したがる。これは心理学で言う認知的不協和の解消に近い。好きなキャラクターが成す術もな死んだという事実を受け入れたく、意味を付与して美化する。

昼ドラ的な悲劇に共鳴しながら、でも「報われてほしい」という心理が働いて美化する——その両方が同時に起きている。


炭治郎の異質さ

主人公の炭治郎も、少年漫画の主人公としては異質だ。強くなりたいという衝動より、妹を守りたいという執着が動機の中心にある。感情をぶつけ、泣き、それでも前に進む。

この感情の豊かさは、少年漫画より少女漫画やレディコミの主人公に近い。


まとめ

鬼滅の刃が年配女性に刺さる理由は、少年漫画の外見の中に、昼ドラやレディコミの文法が埋め込まれているからだ。

少年漫画として男性にも読まれ、昼ドラ的文法で女性にも刺さる。その両立が、あれほどの社会現象を生んだ理由のひとつかもしれない。


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